優秀賞 ひんひん木馬 (神保 堤作)
ふと気づいたら二十六年の歳月が過ぎていた。ご多分にもれず孫可愛さに流木で作った気になる木馬である。私が五十三歳まだ現役で今よりは少しは若かった。海岸で孫と遊んだときヨイショコラショと言いながら運んできた。いくらかくすぶりかけたが、今でも部屋に鎮座している。時によればこれに腰をおろしてひとふり、にやっとして女房を見る。そうすると言いしれぬ郷愁がわいて、互いに何か語りかけようとするが、言葉にはならない。遠い孫はどうしているやら、木馬に尋ねてもおしりをふるばかり、そうした心のかよわせあいに、再びひとむちくれたら、ひんひんと鳴いて走ってくれた木馬です。
向こう側の脚部に「走れ子馬よ正博君」の刻印がある。
向こう側の脚部に「走れ子馬よ正博君」の刻印がある。






