優秀賞 兄の気持ち (小島 絵津子)
大学入学と同時に家を飛び出してアパートを借り、ことあるごとに北海道に住みたい、沖縄に住みたいなどと言い出す私と違い、兄はずっと生まれ育った家や家族が大好きだった。そんな兄が就職して大阪へ行き、もうすぐ十年がたつ。口には出さなかったが毎年、正月休みが終わって戻っていく顔はなんとも悲しげで、母は兄が結婚すると聞いて、「これでもうあの子も寂しい思いをしなくてすむねえ」と、とても喜んだ。
写真の箱は兄の結婚式の引き出物である。寄せ木細工を選んだのは、故郷の小田原を思う兄の気持ちなのだろう。当時兄は二十八歳。「それにしても渋いものを…」と言いながら箱を見て、時々兄の顔を思い出している。
写真の箱は兄の結婚式の引き出物である。寄せ木細工を選んだのは、故郷の小田原を思う兄の気持ちなのだろう。当時兄は二十八歳。「それにしても渋いものを…」と言いながら箱を見て、時々兄の顔を思い出している。






