小田原に住んだ北原白秋の初めての歌集は、そのタイトルを「桐の花」と付けられました。今日は、その桐の花の俳句をご紹介します。

はろかなるものに昨日と桐の花 岡本眸

桐の花というのは、高いところに咲くので、普段、近くに見ることは少ないのではないでしょうか。薄紫色の小さな花を幾つもつけた房が幾重にも重なる花です。
桐は生長が早いので、昔は女の子が生まれると桐を植えて、嫁入りのときにそれでたんすを作ったとも聞きました。ですから、これは高いところに咲き、なかなか近くに見ることのない花、というだけでなく、苗を植えてからの日々を思い、決して戻ることのない昨日という日の遠さというものをも詠んでいるのです。北原白秋には、「桐の花」を上梓する前に、人妻との恋愛で訴えられるという辛い事件があり、これはのちに「桐の花事件」と呼ばれるようになりました。桐の花の淡い紫色に、切なさが沸いてくるような俳句です。