足柄平野の田んぼは、どこも田植えが終わったでしょうか。お米づくりはこれからが本番。でも、麦作りは、そろそろ収穫の時期を迎えています。
今日、ご紹介の俳句は

麦秋や書架にあまりし文庫本 安住敦

季語は麦秋、麦の秋、と書きます。俳句には、こうしたちょっと面白い言い方があって、秋を収穫の季節として捉えて、麦の収穫をするこの時期を麦の秋と呼んでいるのです。他にも、筍に栄養を取られるために、竹の葉が黄ばんで枯れたように見える春を「竹の秋」と言ったりもします。書架、というのは本棚のこと。この俳句では、麦秋や、という言葉と、本棚にあふれている文庫本の間に、直接の関係性はありません。夏の次にやってくる秋は読書の季節と言われていますが、この夏の初めの麦秋の季節には、本棚にきちんと並ぶ何とか全集のような本より、雑然と本棚をはみ出した文庫本の方が似合うような気がします。家の中の風景と、外に広がる麦畑の取り合わせが、一つの世界を作り上げている一句です。