五月も半ばを過ぎると、じわっと汗ばむ日も多くなってきましたね。まだ、ハンカチが手放せない、というほどではありませんが、今日、ご紹介の俳句は

あぶらとり一枚もらふ薄暑かな 日野草城

季語は薄暑、ハクショというのは、薄い暑さ、と書きます。寒がりの人にとっては、まだ暑いというには遠い季節ですが、逆に暑がりの人は、早々と半そで姿になり、ちょっと動いては「暑い、暑い」というような、そんな五月の暑さです。あぶらとり、というのは、女性ならすぐにぴんときますね。顔に浮き出た皮脂を押さえる油とり紙のことです。最近では、男性用もあるということですが、作者の日野草城さんは、今から百年以上前に生まれた男性ですから、普段からよく使っていた、というのはあまり想像できません。京都の有名な老舗「よーじや」さんのサイトによると、油とり紙ができたのは大正の頃、京都という土地柄、舞台や映画関係者、花街の女性を通じて全国に広がったということなので、この作者が一枚分けてもらったのは、珍しい面白いできごとだったのかもしれません。真夏の炎暑、燃えるような暑さだったら冷やしたおしぼりが差し出されるでしょうが、薄暑という季節、一枚のあぶらとり紙に、細やかな心遣いを見せる女性の姿が見えてきます。