田んぼに水が張られるこの時期、田園の静けさを打ち破るのは、そう蛙の大合唱ですね。きょろっとした目玉もピョンと飛ぶ動きも、ちょっとユーモラスで可愛いと思えなくもありません。今日、ご紹介の俳句は

青蛙おのれもペンキぬりたてか 芥川龍之介

季語は、蛙。青蛙の青は、ブルーではなくてグリーン、緑色、ありふれたアマガエルのことでしょう。蛙の鮮やかな緑が、ぬらぬらと光って、ペンキで塗ったばかりのようだ、と捉えた龍之介です。それを蛙に問いかけるように、大げさに驚いて見せるところに、この俳句のユーモアがあります。最近のペンキはすぐ乾くのでしょうか、「ペンキ塗りたて」なんて注意札が下がっているというのも、あまり見かけなくなった気がしますが、もしかしたら、龍之介は、小さな蛙に「この俺に触るなよ」という尊大さをも見出したのかもしれません。芥川龍之介は、古典に題材を取った短編などで、日本を代表する作家としてその名前を残していますが、小説で取り上げたり絵を描いたり、「河童」が心にかかる存在であったことが知られています。水に住む緑色の生き物として、河童に通じる蛙を、特別な目で眺めていたのかもしれませんね。