幼い頃の私の家には水車がありました。水車は大風の時などのほか四六時中回っていました。半径が人の背丈以上もあり、羽根で切るバサバサという音と杵の落ちるドスンドスンという音が混じって大変にぎやかな音でした。ですから水車が止まったときは静かすぎて眠れないくらいでした。戦争が激しくなり廃業するとき父は、記念のため水車の心棒の一部と精巧に出来た万力、心棒の受け石、石臼に一斗升を残しました。万力に昭和十四年とあるのは水車と一緒に新調した年で、二人の車大工が来ていた事を覚えています。今でも川沿いの宿に泊まるとき水の音を聞くと、当時の事が浮かんできます。私にとっては思い出の大切な記念品です。

国原 博

第1回木になる写真展 ねん木賞 水車と私