「子どもはね、大地の声がうんと聞こえるようにって小さいんだよ。だから、子どもは道路の小石や虫や草にも、心をつなげ対話できるのね。大人になるにつれ、背が伸び大地から遠のいていく分、自分の都合しか考えなくなってしまう。」
母がそれを教えてくれたのは、一九九三年の夏の里帰りに訪れたホーチミン・カンザー地区のことだ。カンザーは、ベトナム戦争の枯葉剤によって、森林破壊を受けた被害地である。森林破壊の現状や現地の人たちの森林の再生にかける想いを、僕は目や手で感じた。そして僕は、泥に足を取られながら、二十センチ位の苗を、ベトナムの地にしっかり根づくようにと祈りをこめて植えてきた。
鈴木晃一