昔、或る絵本に夢中だった。野原で飴玉の包みを無責任に捨てた少女を、側で見ていた『木』が説教をする。少女は自然の中で生きることの厳しさを教えられ、自然の大切にする心を育むという物語だ。最後、木は冬支度で落葉し、眠りにつくが、それが決して死ではなく、春という蘇生までの充電である事を悟り、少女は帰途につく。どれ程この少女に感情移入し、木に話しかけられるのを夢みただろうか。数年前、豪州で不思議な体験をした。ガイドの勧めでユーカリの木の幹に耳をあてた時、木が水を吸い取るゴー、という豪快な音を確かに聞いたのだ。それは木が私に話しかけているも同然だった。その音を少しでも長く受け止めていたい、そう思った。

山崎 美帆

第2回木になる写真展 ひび木賞 声を発する木