国が指定する伝統的工芸品のひとつ「小田原漆器」は、木地の自然な木目をいかした塗りが特徴。美しさと毎日の使用に耐える丈夫さを備え持ち、使うほどに手になじみ愛着がわいてくるのが魅力だ。
石川満さんは老舗「石川漆器」の四代目。塗師と木地師に分業されるのが普通の漆器の世界で、「自分ですべてやってみたい」と木地から塗りまで一貫して手掛ける数少ない職人の一人だ。そんな石川さんの、ここ数年のテーマは「暮らしの中の器」。手触りや持ち具合にも気を配って作り、鑑賞用ではなく、実際に使って心地よいものを目指す。伝統の枠にとらわれない大胆な木地仕上げと、独自の意匠を施した塗り。作品を発表する個展も積極的に開き、”漆芸家”としても活躍している。

小田原漆器とは・・・・
小田原漆器の起源は室町時代の中期に、箱根山中で入手できる木材を利用して“ろくろ”による木地挽きが行われた、いわば当地方木工技術の源流をなす挽物細工に、漆を塗ったのがはじまりといわれています。江戸時代に入ると椀、盆、皿などの生産が盛んになり、相模漆の産出とともに、他の産地から漆師を招いて、漆塗技法の向上が図られました。これにより小田原漆器の特徴である、木地の木目を生かしたすり漆の技法や、木地呂塗が発達し、今日に至っています。最近では現代の生活に合う数々の食卓用品などの生産が活発で、産地を代表する製品の一つをなしています。
特徴として、ろくろ加工により入念に磨き上げられた素地に、生漆をよくすり込んで、自然の木目の良さをそのまま生かしたすり漆塗や、木地呂塗が主体です。素朴ながら堅ろうで、使い易さに特徴があります。また盆などのふち囲りに彩漆塗をほどこし、加飾的な効果と、木材の素材感と彩色の取り合わせによる重厚さにも特徴があります。何よりも小田原漆器の良さは卓越したろくろ技術による木地加工を主体に、木目を最大限に生かすことが重要で、このための材料の用い方に工夫がこらされています。
なお小田原漆器は、昭和59年に通産大臣指定の「伝統的工芸品」に指定されました。