釘を使わず木材を組み合わせて箱や家具を作る「指物」。浜野高四さんは美術作品の額や軸入れ、表具箱など見事な仕事を残す名指物師だ。楠材を手掛ける指物師の父に技術を仕込まれ、その後、桐と出会う。「一点の美術作品を納めるだけの唯ひとつの箱を作る」その仕事の面白さに浜野さんは魅せられた。傷つきやすい桐を扱うために独学で勉強し、茶や花を習って風雅を学んだ。
「今の若いもんは、仕事に脚を使えない」と浜野さんは左足で板を抑えながら全身を使って鉋をかける「職人あぐら」の姿勢をとってみせる。休むことなく動かされる鉋から自在に形づくられる、直線や美しい曲線。見事な作品の数々は確かな伝統を受け継いだものだけが生み出せる、職人技の賜物だ。

小指物技法の中にパズル的な機構を組み込んだ小箱類のことを秘密箱、またはトリック箱といいます。江戸時代の船だんすに応用されている『からくり』の原理を小箱類に応用したのが始まりで、明治中期に箱根湯本でこの技法が完成し、その後多くの改良が加えられ、製法、技法、デザインも高度となり、今日に至っています。

一見上下の区別のつかない小箱の側面や、甲板、あるいは底板を上下、左右に少しづつ押したり、引いたりのスライド操作を繰り返して、最後にふたをあけることのできる箱で、少ないのは2回、多いのは数十回でやっとあけられるものもあります。これも箱根細工の代名詞的な存在で、他では見られない極めて独創とアイデアに富んだものです。

製品としては、箱類、指物類、引き出し、貯金箱などが多く、特に貯金箱ではトリックによる錠の役割としてうってつけです。外観が何の変哲もない箱のある部分を操作しないと、ふたが開けられないという、いかにも秘密めいたトリックが特徴的で、非常に興味をそそるものです。最近では、球型の秘密箱も見られ、トリックの難易度も高度になってきています。